インフレ下の投資対象
世界的なインフレ加速を背景に主要国で金利が上昇、国債価格は下落、一方で金利上昇を嫌気して株式も売られた。コロナ禍で肥大した中銀のバランスシート縮小に伴う量的金融引締めの影響も加わり、住宅価格やREITさらには金や仮想通貨など、かねてインフレヘッジ機能を期待された資産の上値も重い。このような状況下、何に資金を振り向ければよいのかを考えてみる。
一般的にインフレ下において、金利上昇の直撃を受ける債券投資、グロース株への投資は難しい。また135円まで円安が進行した足元の状況下では、為替オープンでの外貨建て商品は円高リスクを考慮すると抵抗がある一方、内外金利差が拡大する中での為替ヘッジ付の投資もヘッジコスト拡大リスクから悩ましい。残るは日本株、特にエネルギー関連株やバリュー株となるが、先進各国の株価下落に無反応とは行かず、投資タイミングは難しい。以上を踏まえると、素直かつ消去法的にインフレ連動商品が残る。そこでインフレ連動債の代表として物価連動国債(物連債)の仕組みを見てみよう。
物連債は関係者の要望を受け、財務省により8月債の増額が了承された。その仕組みは図を見てわかるように、基本的には普通の利付国債で、額面がインフレに連動、デフレ時にも100円以下にはならないようフロアーが付く仕組み。但し、インフレ時には額面増加による利益が見込めるものの、長期金利が上昇すれば債券自体の価格が下落、損失となるリスクがある。特に10年金利はYCCの影響で低く、将来的な金利上昇を考慮すると投資対象としての魅力は薄れる。ちなみに直近の10年物連債(27回)の利回りは▲0.75%、10年金利0.25%を踏まえると、市場が予測する10年インフレ率は年1%(=0.25%-▲0.75%)となる。仮にインフレ率が1.25%に上昇(+0.25%)、同時に10年金利も0.5%に上昇(+0.25%)した場合、10年物連債の利回りは▲0.75%(=0.5%-1.25%)と変わらず、利益は出ないことになる。
そこで投資するならYCCの影響が比較的薄い5年エリアの22回物連債(市場利回り▲1.4%)が有利。5年金利は0.1%、予想インフレ率は1.5%(=0.1%‐▲1.4%)だが、足元のインフレ率は2.5%であり、年末にかけて3%程度への上昇が想定されるため、織り込み度合いは低いと言える。加えてフロアーも安心感につながる。足元のデフレ脱却の流れの中で、物価連動国債の魅力は高まりつつある。
0コメント