円安により増加した輸出品

2022年上半期の日本の貿易額は円安の影響もあり記録ずくめで、輸出額は前年同期比15.2%増の46兆円、輸入額も37.9%増の54兆円と半期として過去最高レベル。さらに貿易収支は8兆円の赤字となり、これも半期として過去最高の輸入超過幅を記録した。主因とされる為替動向は、ドル円で年初の115円から10月には一時150円を突破するなど急激な円安が進行した。

過去の経験上、円安は石油などエネルギーの輸入価格上昇から当初は日本経済にマイナスだが、自動車や電機産業などの価格競争力が向上、輸出が伸びることで最終的にはプラスと考えられてきた。実際、今年上期はエネルギー価格高騰の影響で輸入が増加した一方、輸出も増加、輸出数量を商品ごとにみると半数近くが2022年上半期に大きく伸びている。品目としては、経験的に輸送機器(自動車)や電気機器がさぞかし伸びただろうと思ったが、調べると今回は異なる景色が見えてくる。

表1は2022年上半期に輸出数量が増加した商品とその伸び率。食料品が繊維や一般機械などを抑えてトップ、さらに食料品の売上げの中身を見ると、1位アルコール飲料、2位ホタテ貝、3位牛肉となる。国税庁の資料によると、日本産の酒類の輸出額は10年連続で過去最高を更新しており、内訳をみると最近ではウイスキーが日本酒を抑えて1位。海外の外食需要に加えて、国内における家庭内需要も回復したことやEC(電子商取引)販売が増加したことが要因とみられる。特にウイスキーは、国産銘柄の世界的な知名度の高まりに伴い、単価が上昇傾向にあることが輸出額の拡大に貢献しているらしい。実際2020年のワールドウイスキーアワードの「世界一おいしいシングルモルト」にサントリーの白州25年ものが2018年に続き選出されたり、埼玉県の酒造メーカーが造るウイスキーセット(54本)*が香港のオークションで1億円で落札されるなど、国産ウイスキーの人気は世界でうなぎのぼり。

日本の輸出産業の将来を考えるとき、戦後の発展を支えた自動車産業に代表される重厚長大型産業に加え、今後はこのウイスキーに代表される食料品産業や農業などの成長も期待したい。数年後の学生の就職先人気ランキングには、ウイスキーメーカーがずらりという風景もあるかもしれない。

※筆者も、10年ほど前にこのウイスキーセット(名称:カードシリーズ(ラベルがトランプ柄))の最後のリリースとなった「ジョーカー」を秩父まで買いに行ったものの、当時すでに売値が10万円超に達しており怖気づいて購入を断念したことがある。現在の市場価格は150万円超となっており、逃した魚は大きかった。やはり投資には先を見抜く目もさることながら、「えいやっ」という度胸も大切ということだろうか。今夜はグラスを傾けながらじっくり反省したい。

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