日本とトルコと中国

界的な物価上昇とそれに伴う各国中銀の利上げの動きにもかかわらず、日本とトルコと中国は個々の事情により低金利政策を続ける。その影響は自国通貨安(主に対米ドル)として表れ、輸入物価上昇に伴う物価高をもたらす一方、価格競争力の改善による輸出増を通じた株価上昇を招く。足元の日本とトルコにおける消費者物価指数(CPI)と株価の動きは、同じく上昇トレンドにある。一方、中国ではゼロコロナ政策からの転換が期待されたほどの景気回復に繋がらず、足元の物価はデフレ気味、株価も低迷している。改めて3国の経済政策を比較してみよう。

トルコは足元でCPIが前年比40%に達するにもかかわらず超金融緩和策を継続、政策金利は先週の利上げ前までは8.5%、実質金利は▲30%超。この背景には、物価高の原因は高金利にあるとするエルドアン大統領の独自理論がある。日本はCPIが前年比3.2%と政策目標2%を上回る中、政策金利は▲0.1%、実質金利は▲3.3%となる金融緩和策を継続。加えて物価高対策としてガソリン代、電力・ガス料金補助金などの財政支出拡大策を断行する。両国は物価高に対し財政、金融緩和策を維持強化という一般的な経済理論とは反対の政策を採用。実質金利を低下させた副産物として、通貨安に加え株高を享受している。一方の中国はCPIが前年比0.2%に対し政策金利は3.55%と実質金利は大幅プラスであり、足元では通貨安が進む中、金利の影響から株価は下落基調だ。

低金利政策を採る3国だが、今後は各国で異なる動きが予想される。まずトルコはここまで通貨安と物価高が進み、過去何度もデフォルトを経験したアルゼンチン化(CPIは現在114%)が警戒されたが、中銀は今月の会合で2年振りの利上げに踏み切り、政策金利を15%に引き上げた。再選を果たしたエルドアン大統領は、エルカン中銀総裁を含む新たな経済チームによるオーソドックスな経済政策への転換を容認する方針のようだ。但し、政策転換(≒実験)による経済効果が早期に確認できない場合、従来路線への復帰が懸念される。日本は従来からの財政赤字問題に加え、足元で通貨安と物価高(補助金効果を除くとCPIは4%超と試算され米国より高い)が加速しており、かつて先進国から新興国へと転落したアルゼンチン化のリスクも燻る。今後は、昨年の為替介入の延長にあたる、通貨安阻止を名目とした金融政策の修正も想定される。中国は金融緩和下のデフレ状態にあり、背景にある少子高齢化と不動産の不良債権化の組合せは、日本の失われた30年を彷彿とさせる。これまで日本の高度成長期以降の経済運営を分析し自国の政策に反映、日本を追い抜き米国に次ぐ世界第二位の経済大国の座を獲得した。今後は、日本自身が未だ解決策を見い出せていない、日本化への対応が注目される。

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