来年に向けた日本株投資
フィッチによる米国債の格下げを契機に世界的に株価は調整局面入りに転じているが、ここで来年を見据えた投資対象として日本株を取り上げたい。その根拠は以下の通り。
・実質金利の低下…下図は日米の株価と実質金利(短期金利-CPI)の30年間推移であり、実質金利の軸は反転して上に行くほど低くなる。この図から明らかなように、日米ともに実質金利が低下した局面で株価は上昇している。足元の米国ではFFレート=5.375%に対しCPI=3%であり、実質金利は2.375%とプラス。一方の日本では政策金利=▲0.1%に対しCPI=3.3%であり、実質金利は▲3.4%と過去30年間で最低、実質金利から見れば日本株は米株より上昇し易い。さらに日銀は来年以降のCPI低下を予想し異次元緩和を続けるとしており、株や土地など資産価格の上昇は続こう。この流れはバブルとも言えるかもしれないが、両資産共にまだ30年前の水準を回復したに過ぎない。
・低PBR…以前は低PBR株に多く見られる大量の保有資産はコングロマリット・ディスカウント(事業の多角化に伴うマイナス評価)に加え、デフレ下における保有資産の将来価格下落から株価低迷要因だったが、現在は実質マイナス金利による資産価格の値上がり期待から株価は上昇し易い。また世界的なインフレ高進と金利上昇を受け、資金の一時的な避難先として低PBR株に代表されるバリュー株投資の活発化も想定される。加えて足元の日本では東証が低PBRの上場企業に対して改善策を要請したことが契機となり、低PBR・バリュー株全般が年初来堅調な展開。当面は株価指数(日経平均等)をアウトパフォームする局面が続くと予想される。
・新NISA…旧NISAは上限が500万円で原則保有期限は5年とされ、仮に500万円を配当利回り約2%の日経平均ETFに投資した場合、配当にかかる節税効果は500万円×2%×5年×20%(源泉税)=10万円と少額。対する新NISAは上限1,800万円について恒久的に保有可能となり、仮に保有期間40年として配当の節税効果を計算すると1,800万円×2%×40年×20%=288万円と小さくない。市場では、折からの割安銘柄物色の動きに加え、割安株に多い高配当銘柄への新NISA資金の流入を見越した動きも見られる。来年新NISAスタートとなった場合、金融資産2,100兆円の5割を保有する高齢者による積極的な投資が見込まれ、上限に達する当初5年間は節税効果から特に高配当株への投資集中が見込まれる。海外投資家はまだ新NISA制度にそれほど注目しておらず、来年好スタートとなった場合には、改めてメガ銀行などの低PBR・高配当の割安銘柄が買われる可能性があろう。
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