不都合な真実

「不都合な真実」とは、ゴア元米副大統領の「人類の文明はエネルギーを消費し発展し続けてきたが、反面それは地球環境を汚染する歴史でもあった」との主張を描いたドキュメンタリー映画の題名。その後、一部の人物や団体などにとって都合が悪い真実を指す用語として普及した。さて最近の気になる不都合な真実を挙げてみた。

ガソリン補助金…燃料費上昇に伴う国民の生活費負担増に対する激変緩和措置としてスタート。一方でIMFは「EVや新エネルギー等の脱化石燃料化が遅れる」「原油やLNG購入を続けることで間接的にロシアの資金調達に加担、結果的にウクライナを窮地へと追いやる」として即座の中止を求めた。足元では既に原油価格も落ち着いているが、政府は国民の支持獲得を優先、施策の延長を重ねる。この結果、23年度予算の防衛費を上回る7兆円を費やすこととなり、またEV開発で米中の後塵を拝す。

政府による規制…労働生産性の向上を目的にしつつ却って妨げているものに、政府の各種規制が挙げられる。価格面の規制としては⓵ガソリン、電力・ガス料金に加え、②医療費や薬価がある。医療費引上げの調整弁として薬価の引下げが続き、結果として日本は医薬品分野で後進国化しつつある。これら規制が、対象とする企業にどの程度の影響をもたらすか、セクター別の株価推移(図1)でチェックしてみた。足元の5年間で①電力・ガス②医薬のパフォーマンスは市場平均(TOPIX)を下回る。

大統領候補トランプ氏…議会への民衆乱入を煽動、選挙資金の私的流用が問題になるなど、行動は自国優先というより自分第一主義に見える人物が有力な米国次期大統領候補である。歴史的には、自分第一主義を実践するリーダーが率いた国は、ソ連にせよナチスにせよ没落した。足元でトランプ氏はNATO離脱やロシアによる他国侵略を促す発言など、民主主義よりは権威主義国家に近い主張を展開する。トランプ氏が再選となった場合、日本を含む民主主義国家は盟主米国の軌道修正にどう対応するのだろうか。

中国の日本化…不動産バブルの崩壊、少子高齢化と若年層の失業増、米国による経済制裁の強化やデフレ経済の進行と、中国は驚くほど正確に日本の足跡を辿る。日本の失われた30年で分かったことは、不良債権処理には迅速対応が必要、民間の貯蓄積上げと政府の財政支出拡大は成長率鈍化を招く、経済成長とデフレ回避には若年層を中心とした賃上げが有効などがあるが、詳細に研究済みの中国は何故か正反対の政策を採る。振返れば米国も1930年から約30年間はデフレと株価低迷に苦しんだが、このような所謂「日本化」の流れは、世界の覇者になろうとする国が遭遇する必須の試練なのだろうか。

AIの発展…今後は民間企業だけでなく国家における政策立案から戦争に至るまで、AIが重要な役割を果たすと見込まれる。戦争の場合、AIへの解決課題は敵国を亡ぼすことだが、相手国も同様にAIを使うため戦略は高度化と同時に残忍さも高めよう。そのため戦争へのAI利用禁止など核兵器同様の措置が必要となるが、ゲーム理論に基づけばAI抑止には動かず早期に開発を進め高度な戦術をとった方が有利となる。その結果、第三次世界大戦の勃発に至れば、AI開発は人類を滅亡へと向かわせる可能性すらある。この懸念を指摘したAI企業の取締役会は、収益悪化や他社優位性喪失を懸念する従業員らの抵抗により役員刷新を余儀なくされた。

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