米国次期大統領はトランプ氏
今回の米大統領選では共和党候補のトランプ氏が勝利した。大方の予想を覆し獲得選挙人数で大きな差をつけての勝利となり、訴訟などで最終決定が遅れるような事態は回避された。また上院も共和党が奪還、下院も共和党となれば所謂トリプルレッドとなり、トランプ氏の目指す政策が成立し易くなる。ここでトランプ氏が公約に掲げた政策を項目に分けて確認してみる。
移民政策…移民の純流入数は第1期トランプ政権時の年平均74.9万人からバイデン政権下で330万人にまで拡大したが、この削減を目指して治安の安定化や労働需給のタイト化を狙う。対策としては、国境壁の建設、入国と難民申請の制限、難民申請中の国外待機、強制送還に州兵動員、米国内出生の不法移民の子供への市民権付与停止など。
インフレ対策…グリーンニューディール政策の廃止と共に石油・天然ガス採掘を積極化することでエネルギー価格の低下を図る。無駄な連邦支出の削減と規制緩和により1世帯当たりの諸コストを削減する。移民削減に伴う需給緩和により、住宅、教育、医療費の下落を見込むなど。
関税引上げ…中国からの輸入品に一律60%、その他国品にも10~20%の関税をかけ、国内生産へのシフトを狙う。特にEVについては、中国だけでなくメキシコ製も含め100~200%の関税をかける。
減税拡大…25年末に失効するトランプ減税を継続。加えてチップへの課税廃止、現行21%の法人税を最低15%に引き下げるなど多くの税金の削減または廃止することで、国民負担軽減を図る。
軍事外交…米国軍による共同防衛の見返りとして、NATOなど同盟国に軍備負担増を要求。イスラエルの「守護者」を強く主張し、イスラム系諸国による戦闘拡大の回避を狙う。ウクライナ支援を批判すると共に、露のプーチン大統領との首脳外交による終戦仲介を主張、紛争の長期化回避を優先する。
財政支出拡大…トランプ減税継続、個人・法人減税、国防費など公約をすべて実行すると、10年間で財政支出が7.5兆ドル拡大すると試算される。
トランプ氏の勝因は、米国民が物価高と移民の増加に大きな不満を抱えており、現政権にノーを突きつけたためと考えられる。ここで改めてトランプ氏の政策が実行された場合の影響について考えてみる。移民対策では、第1期トランプ政権の政策を再現すれば1/4程度にできる可能性はある。但し、移民減少は安価な労働力の供給不足に繋がるため、物価上昇要因になる。つまり当面米国民は移民減少には満足するものの、もう一方の期待であるインフレ鎮静化には失望することになりそう。インフレ対策を見ると、エネルギー価格の低下は見込めるものの、それ以外は不透明。また関税引上げを実行すると、米国内の輸入品価格が上昇するうえ、相手国の報復関税による関税合戦のリスクもあり、経済学的には物価上昇を招く可能性が高い。減税拡大も一般的には物価上昇要因とされる。軍事外交では、ウクライナは米国からの支援停止勧告を背景に、ロシアへの領土割譲を条件とした停戦に追い込まれる。イスラエルは米国の全面的協力を得て、ハマスとヒズボラへの攻撃を激化する。また主要国との関係においては、西側諸国に対する関税引上げと防衛費負担増の要請などから結束が緩む。中国は関税強化に対抗するため対米連合の構築を模索すると共に、ウクライナ紛争を参考に台湾併合に向けた戦略を練る。といった所だろうか。
市場への影響を考えると、当面米株には追い風だが米債には逆風。中国はじめ諸外国(除ロシア)には逆風となりそうで、欧州株が即座に下落したのも頷ける。
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