タンス預金と新紙幣
家計などが保有するタンス預金が増えているようだ。1990年代までは10兆円弱だったが、金融不安の高まりで1行当りペイオフ1000万円までしか預金が保護されなくなった2000年以降に漸増。その後2015年の相続税強化と2016年マイナンバー制度の開始、日銀のマイナス金利採用などでその動きが加速されたと見られ、足元では50兆円まで膨らみつつある。タンス預金は銀行預金→貸出→預金の貨幣乗数効果の低下となりデフレ要因であるとともに、消費減や被犯罪リスクなどの弊害が挙げられる。
デフレとなる仕組み…ここで2000年と2018年を単純化して比較すると、
ここで日本経済を単純化してGDPに相当する品物A(2000年時点で520個)を生産しそれをお金と交換するテーブルと考えてみる。2000年には520個のAを日銀券520兆円と交換するので、Aの単価は1兆円/個。2018年にはAの生産量が570へと50個増える一方、日銀券も50兆円増発されているのでAの単価は1兆円/個のままである。実経済でも日銀は日銀券の増発をGDP成長にリンクさせてハイパーインフレを防いでいる。しかし、途中で参加者がテーブル上の日銀券を40兆円分ポケットに入れて(タンス預金)しまうと、2000年と比較しAは50個増えているにも関わらず日銀券は10兆円しか増えていないので、Aの単価は530/570=0.93兆円となり単価は下落する。つまり現在の日本経済においては、タンス預金が原因となり現金不足で現金価値の上昇によってデフレが発生している可能性がある。ちなみに日銀は年80兆円を目途として国債買いオペを行い貨幣乗数効果で日銀券流通量増を図っているが、これは民間銀行の当座預金を使って購入しているので日銀券を増発しているわけではない。
タンス預金対策として、
①金利をプラスにする…現在金利がつかないためタンス預金を急増させても気にしていないが、金利がプラスとなれば預金等として戻ってくるはずだ。実際1990年に金利が7%となった時は、銀行支店に債券購入者の列ができた。
②日銀券を増発する…GDP成長に成長通貨量が追い付いていないので、単純にタンス預金分だけ日銀券を増発すればよい。ただし問題点は増発スピードを元に戻すタイミングと、財政規律のさらなる緩みである。すでにGDPの約2倍に達した政府債務が増加することが予想される。
③その他…新札発行など。旧紙幣と交換するタイミングではタンス預金が炙り出されある程度の消費や預金増が起こると思われ、今回の紙幣刷新もその効果が期待される。タイミングは2025年とまだ先だが、上記プロセスが逆に動き始めることで物価上昇の可能性もあろう。
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