なぜ投資をするのか?
定年後に必要な生活費は夫婦1世帯が普通の生活を送るためには平均24万円/月、ゆとりある生活のためには35万円/月らしい。一般的に定年を65歳、寿命を90歳としたとき、世帯平均の年金は21万円/月なので、ゆとりある生活を送るためには14万円/月が不足しており、90歳から逆算すると65歳の定年時点で4200万円の貯蓄が必要となる。
さて、現状日本の金利ゼロの状態で投資もせず4200万円(インフレもゼロ)を貯めるには、40年間働くとした場合毎月平均8.8万円の貯金を続ける必要がある。2018年の可処分所得の平均が40万円/月なので、生涯に亘って所得の約25%を貯蓄に回す計算となる。ここで株式投資等の運用利回りが期待できれば月々の貯蓄を抑えることが可能となるが、損失となれば元も子もない。図は1990年以降の日経平均と配当込日経平均株価推移だが、結局損失となっているので株式投資をしない方が良かったと思うのは早計である。仮に1990年1月から月々8.8万円を配当込日経平均に投資していた場合を税金・手数料抜きで計算し図中貯蓄残として示したが、今現在時価ベースで6000万円となっており29年経過時点で目標額の4200万円を既に超えている。これは配当分を再投資する複利効果に加え、株価が下落したときに多めに購入するドルコスト平均法の効力によるところが大きい。
投資対象として、低迷する日本株ではなく好調な米株だった場合さらに好成績となり(図2参照)、40年間で4200万円の目標達成に必要な投資額は為替を固定すれば月々8千円となる。ところで日本人の金融資産に占める株式は約15%と米国の約50%と比較すると低いと言われているが、1990年当時は15%と日米ほぼ同じだった。その後29年でその株式分15%は当初資産の231%に値上がりしているうえ、残りの85%が米債であればこちらも408%へと値上がりしたので、米国人の老後資産の形成計画は比較的容易で消費性向が高いのも理解できる。つまり、米国において個人金融資産に占める株式比率が高まった原因は、株式投資が盛上った結果というよりはポートフォリオを保持した結果とも思われ、日本政府も預金から株式への資産移動を声高に歌うよりは、日本株低迷の原因を解決すべきと言えよう。
ところで1990年当時の日経平均のPERは約80倍と割高だったためその後長年に亘り下落基調だったとも考えられるが、現在のPERは約12倍と割安で企業収益の悪化が無ければ下値は限られる。今後仮に日経平均が全く動かなくても、現状2%の配当利回りを維持すれば、40年間で4200万円の目標達成に必要な株式投資額は月々5.7万円となる。
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