J-REIT
マイナス金利政策を摂る日欧の国債年間発行額は日本が1.5兆ドル、独・仏が合計0.5兆ドルと巨額で、昨年まで日欧投資家は挙って金利が残る欧州長期債やヘッジ付き米債を購入していた。しかしながら、日欧合わせて2兆ドルの彷徨えるマネーによる買い圧力と直近FRBのハト派転換で欧米金利は急低下となり日・独・仏国債金利がマイナスに沈みヘッジ付き米債の金利も急低下、溢れ出たマネーの投資対象はクレジットリスクのある伊国債のほか社債、CLO等へと広がっている。投資対象を求めるマネーが、日本では徐々に内外債券市場から為替リスクや資金調達リスクの無いJ-REIT市場にまであふれ出し東証REIT指数はリーマンショック以来の高値を付けた。
図1を見ると金利低下とともに溢れ出たマネーが資産市場に流れ込みTOPIXおよびJ-REIT価格が押し上げられている様子がわかる。ところで2015年までは金利低下(債券価格の上昇)に歩調を合わせて、TOPIXとJ-REITが上昇していたが、短期金利がマイナスとなった2016年以降は金利が低下するとTOPIXも下落するようになり、J-REITにマネーが集中しているようだ。つまり金利低下による景気下支え効果は不動産市場には引続き有効だが、金利がマイナスとなると金融機関を含む一般企業にはもはやマイナス要因と解釈されているようで、J-REITとTOPIXが逆相関となっている。
ここで資産債務のバランスから考えてTOPIXの価格がゼロとなった時点でJ-REITや日本国債がデフォルトしないという事態は想定しづらい。つまり、日米欧の株式、REIT、国債をデフォルトリスクを無視した超長期の投資対象としてリスク/リターン(配当or利回り/ボラティリティー)で比較したのが表1である。国債を見てみると為替と調達金利リスクを考えなければ米国債に人気が集中するのも理解できる。REITでは日本と欧州が魅力的だが、政治リスクが少ない日本がやはり魅力的。株では、欧州株の魅力が高い一方、日本株は最高値を更新する米株とリスク/リターンがあまり変わらず、TOPIXの配当の低さに問題がありそうだ。日本の投資家として、為替リスクおよびベーシススワップなどの調達金利リスクを考えるとJ-REITのリスク/リターンは良好で、J-REIT人気はしばらく続きそうだ。
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