米国はマイナス金利となるのか
近年世界中で金利が低下し、そのうちプラス金利の投資適格債券を探すのが難しくなりそうなほどの勢いだが、日本化といわれる日本の状況と照らし合わせるとその可能性は低いと思われる。
まず金利がマイナスとなった経緯だが、日欧などで景気と物価上昇の減速に対する中銀の金融政策として利下げを続けた結果、短期金利を0%まで下げても解決できず、非伝統的手法として政策金利をマイナスとしたことが発端。ただしマイナス金利採用後の株価と物価動向は期待ほど改善されず、日本に至っては図1のように金利が低下すると株価も下落する傾向が見られる。これは低金利の恩恵を受ける
はずの企業部門でキャッシュリッチ企業が増えたため、もはやゾンビ企業の延命に貢献し却って労働生産性の低下をもたらすとの見方があるうえ、個人金融資産1,800兆円の約50%を占める現金の利子収入減少による消費減速懸念、および低金利による銀行収益悪化を見越した動きと見ることができる。つまり日本においてマイナス金利の主たる恩恵は借換分を含め毎年100兆円超の国債をマイナス金利で発行する政府に集中しており、形を変えた増税と考えると株価の下落も納得がいこう。ちなみに金利を▲0.1%とすれば政府収入は1,000億円/年のペースで増加してゆく。
さて日本国民は税金と異なり国債を購入せずマイナス金利を負担しないという選択肢があるが、実は最近の購入主体は日銀と海外。日銀は国民の預金を集めた当座預金で購入しており、海外勢は日本の投資家がマイナス金利を敬遠し代わりに米債を購入する際に支払う為替ヘッジプレミアム(ベーシススワップ) を元手に米銀が購入している。つまり日本では金利がマイナスでも国債購入額は減少せず、それはマイナス金利の欧州債も同じである。
一方、米国債の海外保有分は発行残の40%だが、マイナス金利となった場合はヘッジプレミアムによりプラス金利となる日欧債とは異なり海外勢の米債購入額が減少するので米金利低下には限界がありそうだ。さらに米金利の低下により日欧投資家の米債購入が減ると、米銀によるベーシススワップを元手とする日欧債購入も減り日欧で金利は上昇、米債購入意欲は図2のようにスパイラルに低下する。
結局マイナス金利の蔓延は、海外投資家動向に関係なく自国内でファイナンスができる経常黒字国、且つ米銀がベーシススワップを使って有利に債券運用できる一部の国・地域に留まろう。
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