豪ドルとブラジルレアル
コロナショックを受けて新興国通貨は軒並み下落し、豪ドルとブラジルレアルも大幅安となった。ただし、足元で反発基調に転じた豪ドルと比較するとレアルは弱い。
図1は直近1年の豪ドル、ブラジルレアルおよび中国株の値動きだが、3月まではほぼ同じ動きだったが、3月以降は豪ドルと中国株が上昇に転じているにもかかわらず、レアルの下落は止まらない。中国は両国にとって最大の貿易相手国(全貿易量の約25%)なので、中国株の回復を受けて豪ドル同様にレアルが買戻されても良さそうだが、主として次の3つの問題がレアルの足を引っ張っているようだ。
①原油の急落…図2はWTI原油の1年推移を示したもので3月以降に原油価格の下落が加速している。代表的な原油先物であるWTIは、足元で一時的に期近物がマイナスとなり、売り手は代金を払って原油を処分する状態となった。ブラジルは2012年に原油輸出国となり、2018年には世界14位の輸出国で、原油価格の下落は経済への打撃となる。
②アルゼンチンのデフォルト…表1は豪州とブラジルの貿易相手上位3ケ国。アルゼンチンではフェルナンデス政権が債務再編案を発表し、国債は事実上のデフォルト状態となった。同国はブラジルの第3位の貿易相手国でブラジル経済への悪影響が懸念される。
③政権のコロナ対策…表2は豪州とブラジルのコロナウィルス感染状況で、豪州に比べブラジルは感染抑制に失敗している。経済優先のボウソナロ大統領は商業施設閉鎖などに消極的であり、コロナ対策に前向きな保健相を更迭、大統領の強行策に抗議する法・公安相も辞任するなど、感染と政権混乱収束の見通しが立たなくなりつつある。
現状対円で20円を下回るレアルは、購買力平価では32.5円と計算され、コロナショック鎮静化と世界経済回復が視野に入れば、豪ドル同様にレアルも底打ちとなる可能性が
あろう。
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