バリューかグロースか
最近、新聞紙面においてよく見かけるバリューとグロースの株式分類だが、ここもとは長期間にわたりグロース株がバリュー株のパフォーマンスを上回るグロース優位が続いてきた。例えば日本では、2017年半ば以降、グロース優位の展開が一貫して続いており、バリュー株比率が低い日経平均をバリュー株比率が高いTOPIXで割ったNT倍率は上昇基調。また米国では特にコロナ禍以降は、リモートワークや巣ごもりなどの生活スタイルの変化の恩恵を受けるハイテク関連銘柄が買われた結果、グロースの代表であるハイテク銘柄中心のナスダックの上昇がバリュー株比率の高いNYダウより大きかった。それがこの8月入り後、日米株式市場で物色傾向が変化しグロース株が売られバリュー株が買われる日が多くなり、市場はバリュー株の逆襲と色めき立っている(図1参照)。
まずは、これまでグロース株が堅調だった理由を考えると以下の3つが挙げられる。
① 社会構造の変化…バリュー株の中核である自動車や金融などは技術革新に伴う中長期的な競争環境の変化により収益力は低下傾向。一方、グロース株の代表であるハイテクなどプラットフォーマー企業はコロナ禍においても市場の寡占が進み、さらに収益力が加速するとの見方。
② 低金利…グロース株の将来利益を現在価値に割引く際の割引率が低下することで高いバリュエーションが許容され、結果的にグロース株の評価が上昇。
③ 投資行動の変化…投資家のファンド活用が拡大する中、相場の方向性に賭けるアクティブファンドにはグロースに投資するタイプが多く、相対的にグロース株は買われ易い傾向。
一方、足元でのバリュー株逆襲の原因だが、上記①に関しては、コロナ禍が社会構造の変化を加速した面があり、新型コロナ鎮静化の材料が出れば反対に巻き戻しの思惑が広がり易い。図1を見ると、ワクチン開発のニュースが流れ始めた7月以降バリュー・グロースの動きに変調が見られる。さらに②については、景気見通しの改善に加え、経済対策に伴う国債増発による需給悪化、足元の物価指数の上昇の影響を受け、金利は反転局面入りの可能性が強まった。残りの③については、株価の急回復を背景にした収益確定に伴うバリューへのシフトの進行が考えられる。
ところで、コロナ禍の先頭ランナーである中国株はグロース相場の代表格であり、ウィズコロナ長期化で買われ、アフターコロナ期待で売られる傾向がある。したがって、当面のバリュー・グロースの戦いは、中国株の動きに要注目ということになろう。
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