金利から見た米国株の行方

昨年来、米株はリセッションリスクと金利上昇リスクを抱え弱気筋が多かったが、足元ではソフトランディングあるいはノーランディング(景気後退しない)の可能性すら浮上してきたことで、ショートカバーを巻き込み予想外に堅調だ。

図1は直近1年の米10年金利(右軸逆転)と米国株価指数NYダウとナスダックの推移。これを見ると、NYダウ、ナスダックともに10年金利との逆相関(金利が低下すると株価が上昇する)が認められる。特にナスダックは、金利との(逆)相関が▲1に近いことから、将来の価格を予想をするには、ほぼ10年金利の予想をすればよいということになる。そもそも教科書的にも、インフレ高進に伴う金融政策の引締め、それに伴う景気悪化懸念から「金利上昇&株価下落」。その後、インフレ沈静化が確認できれば金融政策の緩和転換、景気回復期待から「金利低下&株価反発」となる。

そこで、まずは米金利の行方を見通してみる。現状の米金利はリセッションリスクとインフレ動向を材料に動いており、足元ではソフトランディングの可能性が高まっていることに加え、労働需給のひっ迫およびFed高官の相次ぐタカ派発言を反映しやや上昇基調に転じつつある。特に足元ではインフレ動向が金利動向の最大の材料となっているため、CPIを予想してみる。考え方は、約3割を占める帰属家賃は住宅価格の動き(凡そ14ヶ月遅れて動く傾向)を反映、また約1割を占めるエネルギー価格は現状を踏まえ横ばい、残りの部分は足元の賃金上昇率4.4%と歩調を合わせた上昇を想定。以上からCPIは、今年7月に3.3%台まで低下するものの、11月(年末発表分)は3.6%となりFedが目標とする2%まで低下するのは難しそうだ。仮に利上げによる景気減速に伴い賃金上昇率が年末までにIMFが予想する2023年の米GDP成長率1.4%まで低下した場合、CPIは1.7%と予想され、漸く来年の利下げ可能性が出てくる。但し、現状ではFedが指摘するように年内利下げの可能性は低く、いずれかのタイミングで失望感から長期金利が4%程度まで上昇する局面がありそうだ。

以上を踏まえると、米国株は金利上昇により当面は上値を抑えられるが、今後賃金上昇率が順調に低下すれば、来年に向けた利下げ期待から年央以降には反発が期待できる。

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